8.4チチハル事件弁護団声明
1,日本軍によって遺棄?隠匿された毒ガスによって、死亡者1名を含む多数の被害者を生んだ2004年8月4日のチチハル事件から、今日でちょうど1年が経過した。
この間、日中両政府の交渉によって、日本政府から3億円という金額が中国側に支払われ、そのうちの多くは被害者に対して支払われているが、しかし、これでチチハル事件が最終決着したわけではない。
多くの被害者は、事件の後遺症によって以前のように働いて収入を得ることができず、学業を続けることが困難になるなど、人生設計が大きく狂わせられ、将来の生活への不安に苛まれている。また、被害者のほとんどは、退院後も毒ガスの影響による身体の不調が続き、治療や投薬のため、現在も高額の医療費支出を余儀なくされている。一時的な金銭の支払いは、今後も引き続くであろうこれらの被害を填補するには、決して充分といえない。
2,チチハル事件一周年にあたって、われわれチチハル事件被害者弁護団は、毒ガスを製造?配備し、中国の大地に遺棄?隠匿してきた責任を有する日本政府に対し、チチハル事件で被害を受けたすべての被害者への誠意ある対応を求める。
具体的には、①すべての被害者に対して、日本政府に事故の責任があることを認め、真摯に謝罪すること、②すべての被害者に対して、被害に見合った完全な補償を行うこと、③現在も症状の進行する被害者に対して、今後十分な医療ケア等の支援を行うこと、などである。これらは、何らの責任もなく身体的、経済的、精神的な被害を被った被害者らに対して、被害回復のために必要な、最低限の要求である。
3,また、チチハル事件発生後も、中国国内では、日本軍が遺棄?隠匿した毒ガスが大量に発見され、不幸にも、一部ではチチハル事件のように人的被害も生じているとの報道がなされている。
そこで、われわれチチハル事件弁護団は、チチハル事件と同様、今後二度と日本軍の遺棄?隠匿した毒ガスによる被害者を出さないよう、日本政府に対し、①遺棄毒ガス兵器による環境破壊に対し、誠実に対処すること、②遺棄毒ガス兵器を速やかに撤去すること、③日本における毒ガス兵器の製造、配備、使用の事実に関する情報の収集と公開に努め、日本政府が責任を持って究明し、これを中国政府に伝えること、④日本における毒ガス兵器の製造、配備、使用の事実を資料館の建設等の事業活動により未来に記憶すること、を求める。
4,チチハル事件の被害者らは、一片の責任も有していないにもかかわらず、半世紀以上前に中国の大地に遺棄?隠匿してきた日本軍の毒ガスにより、甚大な被害を被った。このような被害の回復のため、日本政府が責任をもって取り組み、二度とこのような事件が起こらないよう適切に対処することは、チチハル事件被害者だけではなく、全中国国民の信頼を回復し、ひいては真の日中友好関係を作り上げることになるはずである。
日本政府がわれわれの要求に、誠意をもって対応し、速やかに行動をとることを望む。
8.4チチハル事件弁護団
2004年8月4日